うちしめりあやめぞかをる ほととぎす鳴くや五月の雨の夕暮れ
出典
詞書
五首歌人々によませ侍りける時、夏歌とてよみ侍りける(新古今) 五首歌:建久六年(一一九五)二月藤原良経家五首歌会を指すという
本歌
語釈
うちしめり〈自動詞ラ行四段、連用形〉
「うち」は接頭語。
動詞の上について、動詞の意味を強めたり種々の意味を添える。
ここでは「ちょっと」というようなニュアンスだろうかcFQ2f7LRuLYP.icon
水気を帯びていること。しっとりと落ち着いていること、静かなこと。
五句、五月の雨。しっとりと湿っている様子を想像する。cFQ2f7LRuLYP.icon
あやめぞかをる〈あやめ(名詞)+ぞ(係助詞)+かをる(自動詞ラ行四段、連体形)〉 かをる
良いにおいがする。かおること。
湿った空気の中に、漂うあやめの薫風。cFQ2f7LRuLYP.icon
ほととぎす鳴くや五月の〈ほととぎす(名詞)+なく(動詞)+や(間投助詞、詠嘆)+五月(名詞)+の(格助詞)〉
鳴く
鳥が声を出すこと。
雨の夕暮れ〈雨(名詞)+の(格助詞)+夕暮れ(名詞)〉
本歌はほととぎすとあやめといういきいきとした生命力を感じさせる物が詠みこまれている。 そのエネルギーが、「あやめも知らぬ」すなわち分別もつかない恋の高ぶりと響き合っている。
本歌は、古今集の恋歌一の巻頭歌。
恋歌一~五までは恋の時系列順に配列されている。
恋の始まりから、相手に伝わらないもどかしさ、意が通った嬉しさと逢瀬の短さ、相手の不実を託つ歌、そして別れ、というように
しかし良経詠のこの歌は、その景を「雨の夕暮れ」に設定している
しめり、雨、鳴くと「涙」を連想させる語句がある。
どこかすがすがしい本歌と同じ語句を使いつつ、菖蒲の芳香の中で物思いに沈む読み手を表現している
現代語訳
しめった空気の中、菖蒲の香りが漂う。ほととぎすが鳴いている、この五月の雨の夕暮れ時。
受容
「ほととぎす鳴くや」に瑕疵があるらしいが…
課題
「あやめ」といっても、アイリスの花ではなく菖蒲を指すらしい。その根拠は何によるのか。
「あやめぞかをる」の香るとは、菖蒲の葉が香り高いことからきているらしい。
これは知らなかった。花が香るものだと思い込んでいた。cFQ2f7LRuLYP.icon
ほととぎすが鳴く意味についてもう少し調べるべき